スペルト小麦について詳しく知ったのは、
ヨーロッパで、パン屋や農家を渡り歩いて、研修をしている時だった。
フランスでは、スペルト小麦のパンを、
一種類でも置いている店を見かけることが、よくあった。
パン食で、小麦アレルギーが多い西洋では、
スペルト小麦のパンは、需要があるのだと思う。
オーガニックの食品店や、マルシェの薪窯のパン屋などにも、よく置いてあった。
スペルト小麦は、パンだけでなく、パスタや小麦自体も販売されていて、
健康食品として浸透しているのだなあと感じた。
ドイツでも、ディンケルというドイツ語になり、パン屋で見かけたし、
スペインで健康志向のパン屋を見学した時にも、スペルト小麦のパンがあった。
でも、日本に帰ってきて、パン屋の準備に取りかかった時は、
どんな小麦でパンを作るか、はっきりとは決めていなかった。
開店前に始めた小麦栽培の一年目は、日本の小麦と、スペルト小麦の種を播いた。
厨房や薪窯小屋をDIYし、パンを試作し、
手探りで小麦栽培をしながら、自分のパン屋の形を模索していった。
小麦栽培二年目は、スペルト小麦に絞って種まきをした。
自信を持って、皆さまに提供できるパンを作りたいと思った時、
スペルト小麦をはじめとする古代小麦のパン屋をやることに決めた。
小麦アレルギーの方も食べやすく、
そうでない方にも、体に負担が少なく、栄養が豊富だ。
味わいも抜群で、皆んなが幸せになれる小麦だと考えた。
日本では、まだ古代小麦はあまり浸透していない。
古代小麦だけでパン屋をやっていくのは大変な道かもしれないと思ったが、
自分の信念を曲げられない性格ゆえ、信じた道を突き進んでやっていこうと決めた。
今でも、その考えは変わらない。
時間がかかっても、少しずつでも、古代小麦の素晴らしさを、
パンを通して、伝えていけたらと思っている。
今、アインコーン小麦という、スペルト小麦より
ずっと古い品種を栽培し始めている。
近い将来、もうひとつの古代小麦パンのラインナップとして
加えたくて、わくわくしている。
まだまだ、やりたいことがたくさんある。
まだまだ、よりたくさんの方に知ってもらう必要がある。
これから、より充実した古代小麦パン屋になれるよう、頑張ろう。