あめふり

6月は雨。だいたい7月も雨。
いや夏全体、日本は雨が多い。
都会に住んでいた時は、雨が嬉しいなんて思うことは、ほとんどなかった。

自然豊かな田舎に移り住んで、森の中に家があると、
目の前に広がる自然のリズムを軸に考えるようになった。

冬。ここは長野だけれど、雪はあまり降らない。
寒さはしっかり厳しいが、晴れが多く、カラッとしている。
木々は葉を落としているので、太陽の日をしっかりと浴びられるのは、冬ならでは。
しんと静まり返った森は、空気が澄んでいて、気持ちがいい。

春になると、雨の日がだんだんと多くなってくる。
すると、暖かさも相まって、驚く速さで草木の葉が出てきて、新緑が広がる。
色とりどりの野花も咲き始めて、春の自然は、目に優しく穏やかだ。

夏に入り、梅雨になると、森ならではの苔の出番だ。
エメラルドグリーンの美しい新芽が、愛おしい。
どんなに頑張っても、たかだか数センチしか伸びないが、
地面の曲線に沿って広がる美しさは、苔ならではだ。
今年も、もうすぐ、一気に出てきてくれるはず。
こんな時期には、雨が降ってくれて、嬉しいなあと思う。
雨が嫌になるほど多いから、日本の自然は豊かなんだよなと実感する。

秋になれば、赤や黄色の芸術的な紅葉に癒され、
葉が落ちれば、歩く度に、そのカサカサと言う音色でも楽しませてくれる。
栗のイガは痛いが、森の誰かが食べた抜け殻を見ると、嬉しくなる。

一年を通して、こんなにエネルギーをもらっていると、
自然に抗おうと思わなくなる。

ここでは、都会以上に自然の厳しさも、不便さも、一段とある。
夏には呆れるくらい大雨が降り続き、雷が毎日のように鳴り、
嵐の後は、大枝が落ちてきて、本当に危ない。
秋だって、森の落ち葉掃除の大変さは嫌になるくらいだし、
冬の寒さはこたえるが、それ以上に、恵みをもらっている。

人間は、なんだかんだいっても、自然に生かされているのは、今も昔も変わらない。

僕も妻も、自然と繋がることができる、こういう場所が好きだ。
息子も、毎日森で何かを発見をして、楽しんでいるようだ。
こんなところだからこそ、自然からエネルギーをたくさんもらって、
それをパンに詰め込んで、お届けできると思っています。

自然にはかなわないが、今月の収穫期にだけは、雨は降ってほしくないなあ。