子どもの力

ある時、子どもがテレビを見て、「パパのパン!」と言いました。
別に、僕のパンがテレビに出ていたわけではありません。
何かと思いましたが、そこには一瞬、赤外線温度計が映っていました。
ハッとして、僕は嬉しくなりました。

パンを焼成するために、薪窯を温める際、
赤外線温度計を使って、窯の中の温度を計っています。
出番が多いわけではないそれを、息子はよく見ていたわけで、
テレビに向かって、ああ言ったのです。

僕が、パン屋になろうと思ったきっかけの一つは、
将来、子どもに仕事をしている自分を見せたい、
忙しい時でも、子どもと少しでも同じ時間を共有したい、というものでした。

最近、息子は、僕が何をしているのか、よく聞いてくるし、よく見にきます。
薪割り中に来て、手斧で真似したがったり、
「こうぼって、なに?」と聞いてきたり、
トラクターの掃除中に、タイヤを拭いてくれたり。

粉挽き中に真っ白になっている僕を、窯の中でパチパチと燃える火を、
どんな風に見ているのだろう。
ただの楽しい遊び相手、ではなく、
自信を持って背中を見せられるような、たくましい父親になりたい。

子どもが、好きなことを、とことん追求するようになってほしいから、
僕は、今、必死に頑張ろう。