春が来た

信州にちょっと遅い春が来て、桜が咲いてから少し経った。
暖かい春になって、スペルト小麦はぐっと成長して、穂ができた。
穂ができると、ようやく小麦らしい形を見れて、ちょっと嬉しくなる。
初々しい緑色の穂が、これからぷっくりと膨らんでいき、
暑い夏には、大きく育った穂が黄金色に変わっていく。


黄金色の小麦畑は、本当にきれいだ。
ヨーロッパの色々な国で見てきた小麦畑が思い出される。
フランスでは、小麦を栽培しながら薪窯で焼く、昔ながらのパン屋を訪れた。
イタリアでは、デュラム小麦を栽培してパスタに加工するまでを行う農家に出会った。
モロッコでは、広大な草原の中で、黄金色の小麦が風になびいていた。


東京のパン屋に勤めていた僕が、
今は長野で畑を耕して、小麦を育ている。
これも、ヨーロッパなどで実際にやっている人たちに出会ったから。
人生はおもしろい。


興味があって訪れたわけだが、本当にやりたいと確信に変わったのは、
みんながとても楽しんでいて、幸せそうに生きていたから。
僕も、自分のやりたいことを形にしていきたい。
まだ淡い緑色の小麦の穂が、成熟して黄金色になるように、
僕も、少しずつだけれど、成長していきたい。