子どもの世界

私は、自宅で、パンを焼いています。
店頭販売はしておらず、オンラインで販売をしています。

自分のライフスタイルに合った販売方法を考えた結果、こうなりました。
農業をしているので、天候によって、農業かパンか、仕事内容を臨機応変に変えなければならないこともあり、
また、自分で育てた小麦で作ったパンを無駄にしたくない、一番美味しい状態でお届けしたい、
という思いもあり、このような形をとっています。

そして、自宅で焼くもうひとつの理由が、
子どもと一緒にいる時間を大切にしたい、ということです。
私の息子は今3歳ですが、この3年間はあっという間でした。
子どもは、すぐに育って、自分で自分の道を歩んでいくでしょう。

今日の彼は、今日しかいない。
一日一日、成長していくから、少しの間でも一緒にいる時間を作ろうと、日々思っています。
一緒にいることができる今は、彼の成長にしっかりと関わっていきたいと思うし、
自分の仕事や、やっていることをたくさん見て、彼なりに何かを感じてほしいとも思っています。

私は、除草が必要な無農薬で、収穫量の少ない古代小麦を栽培しています。
収穫をしたら、天日で乾燥をさせます。
パンは、自分で製粉をして、酵母をつないで、手で生地を捏ねます。
薪は、丸太を切って斧で割り、長い間、天日で乾燥させてから使います。
パンを焼く時には、窯に何度も薪をくべて、しっかり温まってから、灰を出して温度調節をし、
ようやくパンを入れて焼きます。

私のパンの作り方は、言ってしまえば、ものすごく面倒くさいやり方です。
この時代に、とても非効率で、時間のかかる方法をとっています。
でも、自分で本当においしいと思うパンをお届けしたいと考えて、こういうやり方をとっています。

息子は、いつも、そんな私の仕事を見に来ます。
厨房にいれば、小屋の前に来て遊び始め、
「パパ、酵母つくってるの?」と聞いてきます。
窯をやっている時には、窯に薪をくべるのを眺めにきます。
一緒に薪運びをした薪が、燃え盛る炎となるのを見て、温度が上がった窯前の熱気を感じています。
灰を出してからパンを入れるのもわかっています。

最近、焼き上がったパンを出している時に、
小屋の外で、「パパ、すごいね!」と大きい声で、声をかけてくれました。
次の日の朝は、「パパのパン、おいしいね!」と言いながら、むしゃむしゃ食べてくれました。
畑で小麦を育てることから、たくさんの工程を経て、パンが出来上がるのを、
彼なりに理解しているのだと思います。

ひとつひとつが繋がって、パンができる。
自分を信じて、突き進む。
ものづくりの現場で、彼の中に広がる世界を大きくできたらいいな。

五感で感じて、突き進め。
君はなんだってできるんだ。
君が創っていく人生、楽しみだね!