SEED TO BREAD

長野は、冬らしい季節となってまいりました。
この冬は、例年より寒い気がします。
少しさかのぼりますが、まだ暖かい秋だった10月。
小麦の種まきをしました。
GREEN SUNLIGHT BAKERYは、古代小麦のパン屋。
スペルト小麦とアインコーン小麦の種を、播きました。
アインコーン小麦は、まだ商品化できていませんが、育て方が難しくて、
ここ数年間、ずっと栽培方法を試し続けている品種です。

今年の秋は、大きな台風が直撃するようなこともなく、
秋の長雨もなく、穏やかに晴れる日々が続きました。
おかげさまで、種まき日和になり、焦ることもなく、
台無しになることもなく、無事に種まきを終えることができました。
ありがたや、ありがたや、と思っています。
何か起きても、自然や天候にさからうことはできないし、
ただただ、受け入れるしかない。
天候のおそろしさも、自然の恵みのありがたみも、
すべてを受け入れて、小麦を作っています。
そして、それをパンにして、皆様にお届けしたいと思っています。

11月も、大雨になるようなこともなく、小麦たちは、無事に発芽してくれました。
朝晩は冷え込んできて、もう木々の葉も落ちきって、辺りの大地が茶色一色になった頃、
青々とした芽が、土の中からどんどん出てきてくれると、
そのたくましさに、自然の美しさを感じます。
赤ん坊や子どもが、必死に毎日を生きているのと似ているなあと、
子どもができてから、思うようにもなりました。

そして、僕にとって、小麦は、子どものようなもの。
種まきからパンづくりをしていると、やはり、すべてが愛おしくなります。
それが、僕がパン屋をやる理由でもあります。
種からパンへ。
僕の場合は、栽培からパンづくりまでを一貫してやることで、
自信を持って、パンをお届けしたいと思っています。

もちろん、僕よりずっと小麦栽培に長けている農家さんはたくさんいらっしゃるし、
そういう農家さんの小麦を使って、パンを焼くことも、素晴らしいと思います。
けれど、僕は、少しあまのじゃくなところもあるんだと思います。
なんでも、自分でやってみたいという性格なので、試行錯誤をしたりと、時間はかかっても、
自分でやってみて、ようやく自分のものにできる気がするのです。
パン屋とひとくくりに言っても、いろんなスタイルがあります。
それが、おもしろいし、僕は、こういうパン屋でやってみたいと考えて、
今のGREEN SUNLIGHT BAKERYがあります。

パンと真剣に向き合って、黙々と作るのも好き。
太陽を浴びながら、土臭く汗をかくのも好き。
変わらないのは、常にいつも、小麦たちと対話をしていることです。

この秋の小麦たちも、しっかりと発芽してくれました。
この子たちが、すくすくと成長できるように、僕は手助けをするだけ。
おいしいパンになって、皆さまに召し上がっていただけるように、僕はパンを作るだけ。
どうやったら一番いいかを、常に問い直しながら、進んでいきたいと思います。