冬のパン

軽井沢、一年で一番寒い季節が、やってきた。


森の木々はじっと休み、熊は眠っている。
虫はどこかに隠れ、水も動きを止めて凍ってしまった。
時が止まったかのような景色の中、
あたりは静まりかえっている。
夜はといえば、大木の枝を揺らしながらすり抜けていく、
大きな風の音は、怖いほど。


そんな氷の世界で、早朝、いつもの野鳥たちの声が響き渡る。
音もなく現れるカモシカは、そっと静かに獣道を歩いていく。
日が昇れば、葉っぱのない森の中は、太陽がいっぱいだ。
真っ白い雪に照り返す光は、眩しいながらも、嬉しい暖かさだ。
冬は、冬の美しさ、凛とした空気のにおい、澄み渡る景色がある。


凍てつく寒さの中、小屋の中を暖かくして、パンと向き合う。
冬の酵母は、ゆっくりと起き上がり、じっくりと育っていく。
山の中、季節によって、温度も湿度も違うから、
今のパンは、冬のパンです。


パンが応える声を聞きながら、自然と一緒に作るパン。
みんなで作ったパンを、どうぞよろしくお願いいたします。